八十五日目


スパコンの見学に行ってきた。
そう、理化学研究所にある、スーパーコンピューター「京」が一般公開されていたのだ。
スパコンを機会などそうそうない。
それが一般公開されているのである。
しかも、無料である。
これは見に行くしかあるまい。
というわけで行ってきた。

三宮から電車を乗り継ぎ、
「京コンピューター前駅」で下車する。
なんちゅう駅名をしているんだ。
分かりやすいからいいけども。

改札を通ると、
今回のスパコンの一般公開に関するビラを配っている人物がいる。
どうやら、スパコンの公開だけでなく、
周辺の施設を含めた科学&医療都市としてPRしているようで、
関連施設では同じようにイベントや公開講義が開かれているようだった。

京が公開されている施設に行くと、
入り口でパンフレットと京のマスコットがあしらわれた手提げを渡された。
中に入ると、スパコンが活躍している分野やアウトプットに関する小冊子が置かれ、
そのそばでアンケートなどを行っていた。回答するとプレゼントがもらえるらしい。

中は非常に盛況で、お年寄りから子供連れやカップルなどが行きかっていた。
大きめの部屋がいくつかあり、科学に関するブースや小講義が開かれている。
今回の私の目的はそれらではない。
スパコンの見学である。
京を身近で見ることができる施設内見学ツアーがあるのだが、
なんとそれは抽選なのである。

見学ツアーは二種類あり、
「京を支える巨大設備に潜入ツアー」
「京の大きさと温度を肌で感じるツアー」
があり、当然のごとく後者のスパコンを実際に身近で見学できるツアーが人気である。

さっそく抽選の整理券配布の列に並び、券を受け取りおとなしく待つ。
抽選が始まった。
職員の女性が声を上げる
138の整理券をお持ちの方~~」
!?
……数が多すぎなのでは?
一回の見学ツアーの定員が10人で、
それぞれグループで整理券が配られているから、
せいぜい35つ程度の番号しか呼ばれない
うーん、これは無理ゲーなのでは。
案の定、自分の番号が呼ばれないまま、今回の抽選は終わりを告げた。
だが、このツアーは複数回開かれているのである!
次の抽選に再度挑戦する構え。
当らなければ当たるまでクジを引くよ戦法である。

次の抽選に臨む私。
緊張の面持ちで番号が呼ばれるのを待つ。
44番の方~」
ん?いま自分の番号呼ばれた?
手元の整理券を見ると、44番と書いてある。
当った!!!
だが素直に喜べない自分がいる。
今回参加した抽選は「京を支える巨大設備に潜入ツアー」である
つまり、本命ではないのである。
好きな人じゃなくて、その友達から告白されたようなものである。
あー…うん、ありがとう。でも、あー……うーん、どうしよっかな……。
みたいなこう、嬉しいことは嬉しいんだが、
でも自分の求めていたものはそうじゃないというか、微妙な感じのアレである。

とはいえ、別に興味がなかったわけではないので参加はする。
スパコンに供給する電気の発電機や、冷却システム、
そして地下の耐震設備を見学することができた。

この見学で一番良かったのは、冷却システムを見学する際に、
屋上の冷却塔へ上ることができたのだが、
向かいの施設の窓辺に座っている、
とても綺麗な女性職員が無防備に足を組んで座っているところを、
正面やや下から眺めることができた事である。
あまり期待はしていなかったが、実に良い見学ツアーだったと思う。
あとでアンケートにも書いておこう。

あとは、
「京の大きさと温度を肌で感じるツアー」
へ参加して写真を撮れば、きょうのミッションは終了なのだが、
残りの抽選に参加したが、残念ながら全敗してしまった。

一応ガラス越しに京を見学することは出来るので、
適当に写真を撮り、諦めて施設内をぶらつく。
せっかくなので展示ブースを見て回っていると、
AIとオセロを打とう、というものがあった。
ユニフォームを着た職員が、子供を相手にオセロを打っている。

ボードゲームと聞いては黙っておれない。
キッズの後ろに並ぶ。
AIに人間様の知性を見せてやろうじゃないか。

私の順番が来た。
「強さどうします?」
「じゃあ一番強いやつで」

強さは三種類選べるようで、
初心者接待用、ふつう、オセロやってる人間だったら勝てるレベルがあるとのこと。

ちゃんとボコって来ましたとも。
証拠もある。




京で計算していたら
結果は分からなかっただろうが。


少し話を聞くと、まだ発展段階とのこと。
もともと、別の研究にAIを利用していて、
機械学習という分野を知ってもらう機会として、
こうしてAIでオセロをするというブースを開いているらしい。
本職の研究の傍らに作ったオモチャのようなものだろうか。
打ち筋はそこまで鋭くなかったが、
評価値のアウトプットまでできるのはちょっと本格的だ。

さらに別のブースを見て回ると……こ、これは!



Virtuix Omni」じゃないか!!!!!!!!!!
なんでこんなところにあるんだ!?
確かこれは一台あたり百万くらいしたはず……。
これは何とVR世界を実際に歩き回れるというデバイスである。
こんなのゲームショウでも行かなきゃ触れないぞ。
これが体験できるとなれば、遊ばざるを得ない!

VR津波避難体験という題目である。
体験している人間のマヌケな姿を見ながら待つこと十数分。
ついに自分の番がやってきた。
この機器の上で利用する靴を履き、台座の上に乗る。
その際、「滑るので必ず手すりを持って登ってくださいね」と声をかけられる。
見た感じ、ただのプラスチックの台座である。
そんな滑って転ぶなんてことが……
本当に滑った。
身の危険を感じるくらい盛大にずっこけそうになった。
なんだこれ。ぬるぬる滑る。気持ち悪いな。
テキパキとゴーグルなどを装備して、いざ体験。
開始直後に津波が襲ってきた。
側にある歩道橋に避難してくださいと言われる私。
無視して津波に向かって走り出す私。
怒るスタッフ

この機器面白い。
面白いが、走ってる感じがまだ現実とは違った感触で、
そこはイマイチだったが、
自分が体を動かしてVR世界を動き回るというのは新鮮である。
貴重な体験が出来て満足である。



別のブースを探索していると、
なにやらアニメ絵のカードゲームが置いてあるブースを発見。
資料を手に取る。



「量子力学カードゲーム」

うん……うん?
ちょっと何言ってるか分からないですね。


今回のスパコン公開には親子連れも沢山いて、
つまりそういった子供をターゲットに絞って、
科学に興味を持ってもらおうという試みらしい。

今までは陽子と中性子と精子が物質の最小単位だと考えられてきたが、
最近になって、それよりさらに小さい単位の物質の存在が明らかになった。
その物質が量子力学の世界でどのような振る舞いをして、
陽子や中性子を形作っているのかをモデル化したゲームのようである。

キッズたちはよくわからないまま適当に遊んでいる。
私もそれに倣い、よく分からないままプレイする。
心にいつまでも子供の心を持ち続けるというのは大切なことである。
よくわからないままクリアして、景品をもらった。
これである。



なんか普通にクオリティ高いんだが。
ちょっと好きかも。
無生物をキャラクタ―化し、
デフォルメして子供受けするようなデザインにするというのは、
なかなか簡単にできることではない。
キャラ作りや構図も悪くない。
子供の性癖を歪ませるには十分なクオリティである。
しかもこれはクリアしたらタダでくれるのだ。
文句などあろうはずがない。
ちなみに、このゲーム、
「クォークカードゲーム」と検索すれば遊ぶことができる。

ぜひやってみるといい。

0 件のコメント:

コメントを投稿