七十七日目


静岡に行ってきた。

静岡を訪れる用事といえばもちろん、

そう、静岡名物イルカ肉を食べるためである。


イルカ肉とは、

環境テロリストがそれを知ったら顔面レッドホットチリペッパー必須のイロモノ食材。

それが静岡で食べられるのである。

いやが応にも期待が高鳴るではないか。


交流のある新都社作家たちと静岡駅で待ち合わせる。

集合時間は午後五時三十分。

五時過ぎには到着の報告があり、

五時十五分にはもう私以外全員揃っていた。

そのころ私は駅から徒歩五分程度の静岡市立美術館で、

ソファーに寝転がりながら、

今回の展示であるアルバレス・ブラボ写真展のカタログを読みふけっていた。

大した知名度もない作家なのか人もまばらで、

ソファーで休憩する人間は私以外にいない。

寝転がってカタログを読んでいる馬鹿も、私以外にはいない。


五時ニ十分頃には読み終わり、館内の売店を適当にひやかして外に出る。

疲れたので、傍のコーヒーショップでコーヒーを注文する。

時刻は五時二十五分。まだ慌てる時間ではない。

スマートフォンを取り出し、コーヒーカップ片手にツイッターへ書き込む。


「今から家出るわ」


電話がかかってきた。

無事合流を果たし、件の居酒屋へ赴く。

一見何の変哲もなさそうな居酒屋だが、

表にイルカ肉がメニューとして張り出されている。

店に入り、他の品も見回すと、

静岡名物の黒はんぺんやかき揚げといったものの他に、

クジラベーコンやドジョウの鍋があった。

まずは刺身などの盛り合わせなどを注文し、

その後、これらの品も追加で注文した。

イルカ肉はみそ煮やスペアリブといったほかに、

酢で調理したものなど、いくつかのヴァリエーションがあるようだ。

いきなり全種類頼むのはなんとなくアレなので、

みそ煮を注文する運びとなった。


刺身を食べ始めてしばらくすると、

店員のおっさんがイルカのみそ煮を持ってきたので、

いざ実食。

やれやれ、このイルカの煮つけは出来損ないだ。食べられないよ。

また明日この時間に来てください。

本物のイルカのみそ煮ってやつを食べさせてあげますよ。


さて、冗談はおいておいて、

味は臭みの少ないレバーといった感じ。

みそで煮ているのが肉の臭みを取り、

ささ身を思わせる、あっさりした印象の触感である。

肉質の部分と、皮に近い部位があって、

皮は煮汁の味を吸って、そのプリプリした歯ごたえと相まって、うまい。


クジラベーコンはクジラのベーコンだった。

ドジョウ鍋は、一口サイズのドジョウが入った、一人用の小鍋である。

卵とじで、ほんのり甘みのある出汁の味がよくしみていて、これもおいしかった。








0 件のコメント:

コメントを投稿