二十一日目



これより、PSVR開封の儀を執り行う。

身を清め、服を脱いで正座しPSVRと向き合う。

無論、全裸である。

開封の儀という神聖な儀式において、

俗世のしきたりや繋がりをもったまま臨むのは厳禁である。

目を閉じて、数度、深呼吸をする。

心を静め、意識の奥まで集中する。

失敗する訳にはいかない。

開封の儀とは、一度だけ行うことができる。

やり直しをすることはできないのだ。



傍らに備えたカッターナイフを構え、継ぎ目に貼られたシールを裂く。

緊張で震える手を添えて、ゆっくりと、中身を傷つけないように開く。

ケーブル類と、プロセスユニットを取り出す。

ケーブルにはそれぞれ番号が振られており、電源、HDMI、本体、それぞれに対応している。

このどれか一つでも欠けるとPSVRを動かすことができなくなってしまう。

注意しながら整理して並べてゆく。

取扱書を横によけると、梱包された機器が出てくる。

PSVR本体である。

赤子を抱くように優しく持ち上げ、梱包材を外す。

メーカーのロゴに保護シールが貼られており、

これが新品であることを示している。



電源につなげようとしたところで、私の手が止まる。

アダプタの形状が……違う。

開封したのはAmazonUKから輸入したものだ。

プラグから三本の金属片が出ている。

日本の二股コンセントでは使えない。

不覚にも、PSVR開封の儀は、痛恨の失敗に終わってしまった……。





とでもいうと思っただろうか。

欧州規格に適用する変換アダプタは持っている。

私に死角はない。

これに電源をつないで、コンセントへ挿入する。

PSVR本体の電源を押すと、鮮やかな青の光が灯った。



待ちに待って、ついに届いたPS4Proを開封し、セットアップする。

欧州版には国内品にはないデモディスクが付属している。

取扱説明書を読まずに、たぶんこれだろうという操作をし、PS4Proを起動する。

デモディスクをおそらくここに入れるのだろうという場所に挿入した。

テレビにHDMI端子をつなぐと、起動画面が映る。

操作は間違っていなかったらしい。

一息つくと、その駆動音の大きさに驚かされる。

静音器具か何かを導入した方がいいかもしれない。

ヘッドホンやイヤホンを付けて気にならなかったら良いのだが。



さて、あとはPSVRを繋ぐだけである。

PSカメラを設置し……。

PSカメラ……

ないのだが。

AmazonUKを確認する。

注文内容をよく見ると、 
どうやらPSVR本体だけ購入していたらしい。

リコメンドにPSカメラが出てくる。

ぶっ殺すぞ。

そういうことはもっと早く言ってほしい。
明日、家電量販店に行って購入するしかない。

カメラは入手困難ではないので問題はないが、やはり手間なのに違いはない。

それに、少なくとも、今日はプレイすることができない。

私は服を着ることにした。

こうして、PSVR開封の儀は痛恨の失敗に終わってしまったのだった……。



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