四十二日目



今日はゲーム制作のことは考えない。

息抜きの息抜きだ。

進捗について書くことがないので、

適当に話でもしよう。



将棋について語ろう。

81マスの盤上で、互いに相手の王を詰ませることを目的として戦うあのゲームだ。

やったことや、ルールを詳しく知らなくても、

将棋というゲームの存在くらいは知っているだろう。

では、将棋が一番強い存在とは何か、知っているだろうか。

将棋のプロ?なるほど、確かに一理ある。

将棋という世界にどっぷりと浸かって、

一局一局に全てを賭け、命を削りながら戦う彼らだ。弱いはずがない。

昔はそうだった。

将棋のプロこそが最強の将棋指しだった。

だが、今はそうではない。

いま将棋が一番強いのは将棋ソフトだ。

プログラムこそが、最強の将棋指しなのである。



人間と将棋ソフトが戦う「電脳戦」という棋戦で、

プロ棋士が将棋ソフトに負けた。

覆らない盤面を前に、俯き、敗北を宣言する姿が、

ネットを通して世界中に流れた。



電脳戦は数度開かれ、途中から人間側に有利なルールが敷かれたが、

それでもプロ棋士は敗北した。

もちろん、プロ棋士が挽回した年もあった。

だが将棋ソフトの棋力の上昇は明らかで、

ソフトの質の向上だけでなく、ハード面でも年々向上する計算能力に、

生身の人間が太刀打ちする術は、

ますます少なくなってゆく。



フラッドゲートというサイトがある。

そこでは将棋ソフト同士が戦っている。

将棋は人と人が対局するものだったが、

今やソフト同士が戦う時代なのである。



では、ソフトに負けるようになってしまったからと言って、

プロ棋士という存在に価値がなくなったかと言えば、それは違う。

あくまで人間同士がしのぎを削って戦うという姿に惹かれる人間がいる。

棋士が繰り出す渾身の手筋に。

相手の喉元を切り裂く鋭い一手に。

勝者がいれば、必ず敗者が生まれるという、

そのどうしようもない勝負の非情さに、人間は魅せられるのである。



だが、こうしたスリルは将棋というゲームの解析が進めば進むほど薄れてゆく。

この一手の先には必ずこういう結末が待っているという、

完全解析の済んだゲームに将棋がなってしまう日は、

今すぐではないが、そう遠くない未来である。

その現実を前にして盤に向かい合う棋士たちの、

絶望的なまでの戦いに、私はその勇気と蛮勇を称えたくなるのだ。



0 件のコメント:

コメントを投稿