五十四日目



私はレンタルビデオ屋を訪れていた。

映画館で観そびれた作品がレンタル落ちしたので、
それを借りようと思って足を運んだのだ。

スーサイドスクワッドやゴーストバスターズ2などは新しいし人気なので品薄だが、

私のお目当ては話題になっていた作品ではない。

準新作の棚を二度ほど眺めて、片隅に数本おかれているのをようやく見つけた。

ちゃんとレンタル可能の状態だったので胸をなで下ろす。

精算するためにレジへ並んでいる際、何の気なしに視線を移すと、

そこに思わず目を背けたくなるような恐ろしいものがあった。

そう、使用済みレンタルDVDのワゴンセールである。

宝の山である。

一番最初に目に飛び込んできたタイトルは、「キラー・プッシー」

この題名。狂っている。



こんなものを処分セールに出すとは、なんと非道な店だろうか。

こんなもの、見てしまったからには買わざるを得ない。

私の財布を狙い撃ちするような凶行に思わず怒りを覚える。

キラーコンドーム、アタックオブザキラートマトといったような、

B級映画界にその名を轟かせる、伝説のB級映画である。

タイトルを読んだだけでどんな映画なのか分かる。

女性器がとりあえず人を殺すというこの発想

天才のそれに近い。



私は並んでいた列を離れ、ワゴンへと近づいた。

様々な映画が並んでいる。

「死霊のしたたり」

「食人族2

「食人族3

「ヴァンパイア VS ゾンビ」

「メガスネーク」

「ファイブ・ガールズ ~呪われた制服~」

FINAL FANTASY ファイナルファンタジー」



……素晴らしいラインナップだ。

「ホテル ルワンダ 真実の物語」や「世界最速のインディアン」のような、

普通に面白そうな作品も並んでいるが、それらに用はない。

舐めまわすようにワゴンの中身を物色し、

私はレンタルビデオ屋の卑劣な策略にまんまと嵌まってしまった事を悔いながら、

歯を食いしばり、泣く泣くこれらの作品を買い漁った。

私は中身が問題なく観られればパッケージの損傷は気にしない。

しかも三本以上お買い上げで30%オフである。

汚い、さすがビデオ屋、汚い。

そうして私は、この寒空の中、

予定外の出費で心もとなくなった財布の中身とは裏腹に、

ホクホク顔で帰路についたのだった。




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