138日目 100万円かかる作業を数千円で達成した話。

自分のゲームを
世界中の人間に知ってもらいたい。
それは、ゲーム開発者の
共通の望みではないだろうか。

Steamで公開している、「退廃思考」の話をしようか。
私は、あのゲームを日本語ユーザ向けに作った。
テキストは当然日本語である。
元々、私の小説をビジュアルノベルとして作り直したものだ。
一人でシコシコと書いていたものだが、
約十万字ほどある。
だいたい文庫本一冊分である。

ゲームを世界中の人間に知ってもらうためには、
どうすればよいか。
簡単である。
多言語化(ローカライズ)すればよいのである。
では、多言語化すれば良いではないかと思うかもしれないが、
事はそう簡単ではないのである。
多言語化するにはお金がかかるのだ。
例えば、十万字のテキストを英語に翻訳しようとした場合、
条件にも左右されるが、
だいたい五十万円~百三十万円ほど必要なのである。
五十万円程度というのは、適当な機械翻訳を利用した場合の話だ。
普通に翻訳するとしたら、百万円程度必要だと考えればいいだろう。
問題は、私にそんな金は払えないという事である。
そんな訳で、製作したゲームの多言語化は棚上げされていたのだが、
最近、とあるサービスがリリースされた。
それは、
AIによる機械学習を利用した翻訳サービス、
DeepLである。
7807500円で利用でき、対応言語は
英語、中国語、ロシア語、ドイツ語、フランス語、ポルトガル語など。
主要な言語に対応している。
とはいえ、しょせん機械翻訳……
Google翻訳のちょっと高級バージョンだろうと、たかを括っていた。
ちょっと値の張るオモチャ程度に思っていたのだが、
試しに利用してみると、
翻訳精度が物凄く高いのだ。
日本語のニュアンスをくみ取ってくれる……だと。
Google翻訳とは明らかに一線を画したテキストが返ってくる。
十分すぎるほど実用的だった。
私は自分が英語翻訳のニーズを持っていたことを思い出した。
なんでこのツールをオモチャだと思っていたのだ私は……。
他にもいくらかの文章をDeepLに投げつけてみるが、
ほぼ完ぺきに近い訳が返ってくる。
訳がおかしいのは、原文の主語が曖昧だったりと、
原文に問題がある場合くらいだった。
AIの凄さを実感した。
そこで私は決心する。
これでゲームの多言語化を成し遂げよう。
百万払って翻訳してもらうよりも、
月数千円で翻訳できる時代がやってきたのだ。

二週間ほど原文を修正しながら作業した。
出力された英文を見ながら、原文を直す。
「機械翻訳が訳しやすい文章」に直すことで、
英語がOKなら他の言語でも
問題ない文章が出力されるはずであるという計算だ。
翻訳が終わったらUnityで英語版のゲームをビルドし、
Steamにデータを投げて公開する。
出来てしまった。
百万円かかる作業が、
たったの数千円で……。

DeepL、個人ゲーム開発者の救世主になるのではないだろうか。